そのキスで、覚えさせて
なっ……何をする気?
あたしは顔を歪めて思いっきり遥希を睨んでいた。
そんなあたしに、
「いいなぁ!あたしがやりたいなぁ」
なんて縋りつく泉。
いつもみたいに「いいよ」と言いかけてしまうが、
「駄目だよ。
だって僕、そこの彼女が好みなんだもん」
遥希はにこやかに言う。
その間にも、あたしの前にスタッフが来て、あたしに大きな花束を手渡す。
そして、こう告げた。
「カメラが回ったら、ステージに上がってこの花束を渡してください」
「……え?ちょっと待ってください!」
スタッフを引き止めようとしたが、あたしの役だと決まってしまったみたいで。
ぽかーんとしているうちに、近くにカメラや照明が移動してきた。
再び遥希を睨む。
だけど彼はやっぱり、笑顔であたしを見るだけだった。