そのキスで、覚えさせて
遥希を見ながら、さっきのライブを思い出してしまった。
そして、胸がきゅーとなる。
「遥希、かっこよかった」
思わず言ってしまった。
「かっこよかったし、歌も上手だったし……」
「うるせぇよ」
遥希は紅くなって横を向く。
こんないつも通りの遥希がとても愛しい。
そんなあたしたちの間に、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「俺、いなくても良かったんじゃない?」
そう言って少し離れた椅子に腰掛けていたのは、蒼さんだった。
蒼さんは碧仕様のオレンジ色のウイッグに、黒っぽいシャツと細身のパンツを穿いていた。
……碧だ。