そのキスで、覚えさせて





気まずい沈黙の中、泉の鼻をすする音が聞こえてきた。

あたしはそんな泉を見ることが出来なくて、下を向いた。

泉の気持ち、何となく分かる気がする。

同僚のあたしの彼氏が大好きな遥希で、あたしに裏切られたんだと思っているんだ。

……そう、あたしは泉を裏切ってきた。





「あの……美咲ちゃん?」




瀬川さんが遠慮がちに口を開いた。

そんな瀬川さんに、



「すみません」



頭を下げる。

瀬川さんの気持ちは分かっていたけど、あたしには応えることが出来ない。

あたしには、遥希しかいないんだから。



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