そのキスで、覚えさせて
「やっぱり蒼さんのおかげなの?」
また遥希は怒るかな、なんて思いながら聞いていた。
すると、遥希は意外と素直にそうだな、と答える。
「悔しいけど、アイツはすげぇ。
発声方法やボーカルのコツも、蒼が教えてくれた。
かっこよく見える立ち方とかアクションとか。あいつは計算し尽くしてるんだな、と思った」
そうなんだ。
ほわーっとしていて天然の蒼さんだけど、碧は本気でかっこいい。
そのかっこよさにまんまと騙されていた。
「まぁ、そんな話はもういい。
蒼のおかげで映画は上手くいってる。
今日はもう、仕事のことは考えたくねぇんだ」
遥希はそう言って、あたしに軽いキスをする。
それだけで、顔がにやけて幸せだと思ってしまう。