そのキスで、覚えさせて
結婚とか妊娠って、祝福されるものだと思っていた。
あたしはもちろん遥希と家族になりたい。
だけど……
あたしの妊娠によって、今の幸せも全て崩れてしまうのではないかと思った。
震える手で、玄関の扉を開ける。
開けられた扉の隙間から、部屋の中の灯りが漏れた。
それで、遥希が帰ってきていることを悟る。
俺様でキツいことも言ってしまう遥希だけど、すごくマメであたしを大切にしてくれる。
今日もあたしの無理なお願いを聞いて、はやく帰ってきてくれた。
こうやって遥希を振り回すのが、陸さんから嫌われた原因かもしれないのに。
リビングに入ると、遥希はソファーに座って台本を読んでいた。
例の、素敵映画の。