そのキスで、覚えさせて
「お前、別れ話するつもりじゃなかったのか?」
「えっ?別れ話?」
「俺が多忙で愛想尽かしたか、お前の友達とトラブったんじゃねぇのか?」
「遥希、考えすぎだよ」
そんなことを言いながら思った。
あたしが妊娠だなんて、考えもしないんだろう、と。
だけど、遥希の思い違いのせいで少し気分がすっきりした。
やっぱり遥希はあたしと別れたくないのだと再確認出来て。
「……出来たかもしれないのです」
「は?」
遥希はその綺麗な顔で、あたしを凝視する。
その視線がぶつかるだけで、ドキドキが止まらない。
こんなに窮地に追いやられているのに。
あたしは、震える声で遥希に伝えた。
「子供……出来たかも」