そのキスで、覚えさせて
遥希がわざとらしく咳払いした。
それで、はっと我に返った。
そんなあたしに、遥希は聞く。
「お前……まだ碧が好きなのか?」
「えっ……」
思わず口を噤んでしまった。
碧と聞くと、蒼さんではなくて碧が思い浮かぶ。
クールで、かっこよくて、カリスマで。
その歌は尖ったナイフのように、ぐさぐさ心臓を突き刺して。
そんな碧からは、簡単に離れることは出来ない。
あたしは、真っ赤な顔をしていたのだろう。
藤井さんは面白そうに笑っていて、
「F死ね!碧マジでぶっ殺す!」
遥希は鬼みたいな形相でいつもの台詞を唱える。
藤井さんがいるというのに。