そのキスで、覚えさせて






遥希がわざとらしく咳払いした。

それで、はっと我に返った。

そんなあたしに、遥希は聞く。





「お前……まだ碧が好きなのか?」



「えっ……」




思わず口を噤んでしまった。





碧と聞くと、蒼さんではなくて碧が思い浮かぶ。

クールで、かっこよくて、カリスマで。

その歌は尖ったナイフのように、ぐさぐさ心臓を突き刺して。

そんな碧からは、簡単に離れることは出来ない。





あたしは、真っ赤な顔をしていたのだろう。

藤井さんは面白そうに笑っていて、



「F死ね!碧マジでぶっ殺す!」



遥希は鬼みたいな形相でいつもの台詞を唱える。

藤井さんがいるというのに。



< 198 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop