そのキスで、覚えさせて
そんなあたしの気持ちとは裏腹に、遥希は神妙な面持ちのまま告げた。
「酷い怪我はしてない。
でも、急に怖くなって……
何も出来なくなった」
……え?
「マジでやべぇ。
……コンサートだってあるのに」
遥希は顔を歪ませてあたしを見た。
余裕のない顔だった。
いつもは俺様で強気の遥希。
当然、あたしの前でもかっこいい遥希でいた。
そんな遥希が、恥を忍んで打ち明けてくれた。
あたしは、そんな遥希の気持ちを大切にしないと。
そして、出来る限り力になりたい。
だけど、もちろんあたしはバク転なんて出来るはずもなく。
遥希にしてあげられることなんてないことに気付く。