そのキスで、覚えさせて
「賢一。お前、すげぇな」
思わずこぼした遥希に、
「だろ?俺の包丁はすげぇんだぜ」
相変わらず変な発言を繰り返す藤井さん。
こんな藤井さんに、ようやく慣れてきたあたし。
はじめは赤面したり、ドキドキしたりで、会話にもならなかった。
気さくで優しい藤井さんはあたしにも自然体で、あたしもそんなに意識しなくなったのだ。
……Fということを。
あたしが長年追ってきた、Fの玄ということを。
「藤井さんのお店、最近どうですか?」
そう聞くあたしに、
「遥希のおかげでやべぇよ」
藤井さんは嬉しそうに言う。
「今年は忙しくなりそうだ」