そのキスで、覚えさせて
こんないつも通りの夕方だったのだが……
不意に藤井さんの携帯が音を立てた。
「はいもっしー」
やっぱり変なテンションで電話に出る藤井さん。
半笑いで話を続ける。
「マジで?
今、遥希ん家。
……あぁ。最上階、上がって来いよ。
……はいはーい」
そう言って電話を切った藤井さんは、少し困った顔をして遥希に言った。
「アイツ、遥希に渡さないといけねぇものがあって、俺の家に来てるらしい。
だから、ここに来いって言っちまった」
そしてちらりとあたしを見た。