そのキスで、覚えさせて
思わぬ言葉に頰が緩んだ。
そして、心の氷が溶けていくようだった。
あたし……
いいんだ。
遥希の隣にいていいんだ。
「正直、バク転とかどうでもいい。
あいつが壊れないように、アンタが支えてやって欲しい」
その言葉が胸に染み渡る。
すごくすごく嬉しくて。
出来る限りのことをして、遥希を支えたい。
だけど、他人には興味のない陸さんが、どうしてそう思うんだろう。
何かの間違いではないかと思い、聞いてしまった。
「陸さんは……遥希が好きなんですね」
少しだけ気まずそうな顔をして、そっぽを向く陸さん。
そして、相変わらず低くてぶっきらぼうな声で告げる。
「好きっつーか、仲間だから。
今まで散々苦しんできた遥希が、ようやく幸せになれる。
そんな嬉しいことねぇだろ」
そう残して、陸さんはスタジオから出て行ってしまった。