そのキスで、覚えさせて
「ねぇ、遥希?
あたしも踊るよ?」
「……はぁ?」
遥希は思いっきり嫌そうな顔であたしを睨んだ。
だけど、負けない。
音楽も何もないけど、あたしは必死にダンスを踊った。
下手な歌を歌いながら、余興のために覚えたダンスを。
「……冷やかしかよ。
それか、新種のギャグか?」
遥希はため息をついて、その場に座りこむ。
すごく嫌そうだけど、あたしの茶番に付き合ってくれる、優しい遥希。
そんな遥希が大好きだ。
音痴だけど、ダンスだって上手に出来ないけど、必死に髪を振り乱して踊った。
そして……
とうとう間奏に差し掛かる。
ここで本来ならバク転するのだが……
あたしは助走を付けて、地面に手を付ける。
そして、勢いよく足を振り上げた。