そのキスで、覚えさせて








隣に若い女性が座った。

遥希のキラキラうちわを持っている。

遥希の顔を見たら、どきっとした。

彼女は、あたしが遥希のもとへ向かうなんて分からない。

……いや、もしかしたら、遥希にすら会えないかもしれない。

遥希は多忙だし、今日は明日のコンサートに向けてゆっくり休まなきゃだし。

万が一、遥希に会えなかったら、どこかホテルに泊まらなきゃ。

そう思って、札幌の地図を開いたが……





「観光ですか?」




隣の女性に話しかけられる。

そんな彼女に、



「いえ……なんとなく行こうと思って……」



そう伝えてしまった。



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