そのキスで、覚えさせて






すると、彼女は怪訝な顔をしてあたしに言う。




「もう、市内のホテルなんて取れませんよ?

TODAYのライブで、満室ですから」





そうなんだ。

そんなにたくさんの人が遥希たちを見るために札幌にいるんだね。

そんなファンのためにも、百パーセントの力を出すことの出来ない遥希はすごく苦しんでいるのだろう。





「遥希、怪我でアクロバットが出来ないらしいですよ?」




彼女はあたしに言う。




「心配だな。

あたしが遥希の彼女だったら、そんな怪我させないのに」





理不尽な発言だと分かっている。

だけど、彼女の言葉があたしの胸に突き刺さった。



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