そのキスで、覚えさせて
誰もいない控え室は、ひどくがらんとして寂しかった。
あたしがぼーっとしている間にもどんどん時間が過ぎて、ドームの開場が始まったことを知る。
遥希が帰ってくるかなと思ったのに、帰ってくる様子もない。
きっと忙しくしていて、コンサートが終わるまでは会えないんだろう。
結局何も力になれなかったあたしを、ひどく恨んだ。
そして、時間がゆっくりと過ぎて……
問題の時間となる。
控え室のモニターが急に派手な花火を映し出し……
音楽が鳴り始める。
その音は、モニターから溢れているのではない。
ドーム全体がコンサートの音で、振動していた。