そのキスで、覚えさせて
「皆さんも知っていると思いますが、僕は……付き合っている彼女と結婚しようと思っています」
ファンからは、悲痛な叫び声が聞こえる。
……そうだよね。
ファンは遥希の結婚を悲しむよね。
当然のことだけど、やっぱり寂しい。
遥希はさらに続ける。
「ですが、僕はしっかりとプロポーズもしていません」
えぇーっ!と声が上がる。
あたしも、えぇーっという思いだった。
これから何が始まるの?
身体が固まって、鼓動だけがやたら速い。
「だからこの場を借りて、しっかりプロポーズをしようと思います」
あたしはもはや呆然として、遥希を見ることしか出来なかった。
藤井さんに助けを求めたが、藤井さんはわざとらしく無視してくる。