そのキスで、覚えさせて
会場にはアンコールが鳴り響いている。
あたしも涙を流し、手を叩く。
胸が痛くて、熱くて、そして幸せだった。
そんな中、藤井さんがあたしに言う。
「最後までいたら、きっと混乱する。
遥希のもとに行くのは、今がチャンスだ」
そして、わざとらしく聞いた。
「美咲ちゃん、どうするんだ?」
どうするって……
決まってるよ。
あたしには、遥希しかいない。
あたしは藤井さんを見て、しっかりと告げた。
「遥希のもとに行きます」
そんなあたしを見て、藤井さんは満足げに笑った。