そのキスで、覚えさせて
改めて婚姻届を手に取る。
普通の紙切れ一枚なのに、すごく重く感じる。
これを出せば、あたしは遥希の妻になる。
武内美咲から、星村美咲になる。
結婚するのが不安な時期もあったけど、今はすごく嬉しい。
「お前は俺と結婚して、悩むことも多いかもしれない。
俺は特殊な人間で、プライベートすらないから」
遥希は静かに告げる。
「でも、絶対に幸せにするから。
どんなことがあっても、お前を守るから」
その言葉ににやけてしまう。
すでに怖いくらい幸せだ。
これ以上幸せになることって出来るのかと思うほど。
遥希はあたしを見て、柔らかい笑みを浮かべる。
あたしの大好きな遥希の笑顔。
この笑顔も、この先ずっとあたしだけのものなんだ。
「遥希を独り占め出来る」
そう言ったあたしに、
「もとから俺はお前だけのものだろ?」
遥希は甘く耳に残る声で告げた。