そのキスで、覚えさせて
そんな、いつも通りの時間だった。
ライブが迫っていることも、Fのツアーが始まっていることも、現実味がないほどだ。
相変わらず芸術的な藤井さんの料理に、あたしたちは見入る。
「このメニューのポイントはだな……」
そう言って、丁寧に遥希に教えてくれる藤井さん。
その穏やかな笑顔を浮かべた顔は、やっぱり玄と同じで。
Fのことを考えてしまう。
そんなあたしは、藤井さんに聞いていた。