そのキスで、覚えさせて
「そういえば今日の夜、最終の打ち合わせがあるんだよな」
「だな。それが終わったらいよいよだな」
藤井さんは相変わらず人の良さそうな顔で返事をする。
そんな藤井さんに、遥希は言った。
「賢一、忙しいのに悪いな」
「ん?」
「こんな時にまで、料理の面倒見てもらって」
遥希は言いにくそうにそっぽを向いている。
照れ屋遥希のお出ましだ。
そんな遥希に、やっぱり藤井さんは笑顔で言う。
「俺はいい気分転換になって嬉しいぞ」
こんな時に思う。
藤井さんって、本当に性格がいい。
優しいお兄ちゃんだ。
ますますファンになってしまうよ。
「楽しみにしてるな、遥希」
遥希は案の定、すごく嫌な顔をしたけど、あたしも楽しみにしている。
また、いつもと違った遥希に酔いしれたい。