そのキスで、覚えさせて
正直、家に帰ると蒼さんがいてドキッとしたが、蒼さんはいつもの蒼さんだった。
そして蒼さんはあたしにライブのことを思い出させる暇もなく、お馬鹿発言を連発する。
「超高級霜降りステーキがいい!
俺がお肉だけ焼いてあげる!」
「やめろやめろ」
遥希は心底嫌そうに言う。
「賢一が言っていたけど、お前料理超出来ねぇんだろ?
賢一の高級鍋、三つも穴開けたんだろ」
そうなんだ。
そんな話に笑えてしまう。
だけど、やっぱり結婚式事情が気になって、あたしは蒼さんに聞いていた。
「蒼さんはゲストを呼んで、気まずくなったりしなかったんですか?
……何人くらい呼ばれたんですか?」
「うーん……唯ちゃん側はみんな知ってたからね」
蒼さんはアイスのゴミをゴミ箱に投げ入れようとして、それが床にべちゃっと落ちた。
遥希が般若の顔で蒼さんに歩み寄り、頭をスパーンと叩く。
まるで漫才だ。