そのキスで、覚えさせて
だけど、遥希は嫌そうに顔を歪めて言う。
「お前、Fのファンだろ」
「それとこれとは関係ない!」
もしかして、僻み?
なんて言葉が、口先まで出かかった。
だけど、何とか飲み込んで良かった。
僻みに決まっているだろうから。
だって遥希は、好きでTODAYにいる訳ではない。
遥希はあたしから目を逸らし、嫌そうな顔をしたまま言う。
「こんなこと言うの嫌だけど、あいつらはすげぇよ。
被せとか口パクとかもないし、表現力も豊かだし。
だから、俺たちの無様な歌とか見せるの嫌なんだよ」
思わず口を閉じて、遥希を見ていた。
遥希はそんなこと思っていたの?
確かにFはすごいけど……
あたしはそんなこと思わない。