そのキスで、覚えさせて
「そんな訳で、コンサート行くから」
「は?」
やっぱり嫌そうな顔をする遥希。
「もう申し込み終わってるだろ」
「……えぇぇぇ!?」
悲痛な叫びを上げるあたし。
我ながら愚かだ。
遥希が何も言わないから、コンサートなんてないと思っていた。
それに、後で知ったことだが、TODAYのコンサートは倍率が高いということ。
あたしが頑張ったところで、最初からどうにもならなかったかもしれない。
「藤井さんに相談してみる」
悪あがきに言うと、
「お前、何でも藤井藤井だな!!」
遥希の雷が落ちた。
そんな遥希の気持ちも何となく分かる。
気さくな藤井さんに碧の話をしているうちに、どんどん打ち解けてしまったあたし。
今では藤井さんを優しいお兄さんとして慕っている。
藤井さんは既婚者だし、恋愛感情はもちろんない。
そんな現状に、遥希が嫉妬しているのも知っていた。