そのキスで、覚えさせて
確かに最近、遥希は忙しそうだった。
日に日に忙しそうになり、会えない日が多くなった。
それは、コンサートが近付いているからかもしれない。
「美咲、今日も暇なの?」
「うん……」
そう言って、あたしたちはとあるバーに来ていた。
暗くて大人の雰囲気のバー。
髪を巻いて、デパート系の服装のあたしには合っているように思えるが、実は体育会系のあたし、庶民的な居酒屋のほうが得意だ。
だが、泉とはだいたいこんなお洒落な店に来ている。
ナンパ待ち……なんてことは、もちろんない。
ここで、めくるめく泉の恋バナを聞くのだ。