そのキスで、覚えさせて
陸さんの車は、近くのコインパーキングに停めてあった。
やっぱり稼いでいるのだろう、濃紺の外車だった。
革張りの座席に座っても、なんだか居心地が悪い。
そんなあたしがいるのを忘れているかのやように、陸さんは無言で運転する。
その沈黙が気まずすぎて、
「あの……車かっこいいですね」
とか、
「今日は仕事終わりですか?」
とか、無理矢理話題を作ろうとした。
それでも、陸さんは短くあぁと答えるだけで。
どうにもならないあたしは、とうとう話すのをやめてしまった。
そして、ぼーっと車の外を見ていた。