そのキスで、覚えさせて
濃紺の車は繁華街を通り過ぎ、海沿いの道に出る。
きっともうすぐ遥希の家だ。
やっと解放される。
そう思った時、ようやく陸さんが口を開いた。
「アンタ、マジで迷惑」
……え?
あたしは陸さんを見て固まっていた。
「遥希の仕事に支障が出るから交際には反対しないけど。
あいつを引っ掻き回すの、やめてくれね?」
「ご……ごめんなさい」
思わず謝ってしまった。
確かに瀬川さんの件はいけなかった。
誠の件で反省したはずなのに、同じことを繰り返してしまった。
だけど……
それ以外に、なに?
あたしは遥希を引っ掻き回しているつもりはない。