そのキスで、覚えさせて






「でも、彼に話すと負担になるんじゃないかと思って……」



「確かに負担かもしれない。

でも、黙って我慢しているほうが、もっと負担かもしれない」




唯さんの言葉が胸に沁みる。

そんな唯さんは、少し懐かしそうに言った。




「蒼はああ見えて鋭いから、あたしが落ち込んでいると見透かされてしまうの。

それに繊細だから……

蒼に心配をかけたくなかった」





そうなんだ。

唯さんは蒼さんのこと、すごく考えていたんだな。

それに比べて、あたしは自分のことばっかり。

遥希もきっと心配している。

あたしが不満を溜め込んでいることを。

だから、また「黙って自己解決して、俺から離れていく」なんて言われるんだ。


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