そのキスで、覚えさせて
「どうしたの?」
「どうしたの?じゃねーよ」
遥希はすごく嫌そうに顔を歪める。
「お前がデートしたいっつーから、デートしてやろうと思ったんだ」
超上から目線の言葉をいただいた。
その言葉が嬉しくて。
嬉しすぎて。
あたしは、満面の笑みを浮かべていた。
「下手に変装したり、派手な服を着るとバレるって、賢一が言っていた」
遥希はあたしの手を繋いだまま言う。
確かに、いつもの遥希は怪しすぎる。
まるで犯罪者で悪目立ちしている。
だけど今日の遥希は人々に溶け込んでいて。
長めのウィッグが顔を隠しているのもあって、なかなかバレない。
だけど、こうやって一緒に歩いて初めて気付いた。
遥希にはスター独特のオーラみたいなものがあって、すれ違う何人かは遥希を二度見していた。
TODAYの遥希だと気付いているかは分からないが。