A・O・I

一瞬間があって、温かくて柔らかい手が俺の肩に優しく置かれた。


「あら~もう酔っ払っちゃった~??少しこっちで休みましょ!!さぁ、さぁ!」


「...........大丈夫...です...から...........。」


「それの何処が大丈夫なの?」


小夜さんに小声で諭されながら、押される様にして連れて来られたのは、店と一続きになっている自宅のリビングだった。


「ここ座って休んでて、落ち着くまで居てくれていいから。ご飯も持ってくるからここで食べて。」


「でも...........」


「いいから!!年上の言う事は素直に聞くものよ?私は店に戻るけど、気の済むまで居てくれて構わないから。」


「...........はい...すいません。」


小夜さんは、テッシュボックスを俺の目の前にコトンと置くと、ニッコリ笑って部屋を出て行った。


「はぁ~...........何やってんだ俺は...........。」


誰も居なくなると、俺の涙腺は全く堪える気が無いのか、溜め息を着く度にホロホロと涙を量産した。

涙が止まるまでは暫くかかり、漸く落ち着つきを取り戻した頃には、すっかり料理は冷めてしまっていた。

冷めた料理でも充分美味しかったけれど、少し残念な気持ちになる。


「ご馳走様でした。」


「あら!残さず食べてくれたんだね?お粗末さまでした。」


「凄く美味しかったです。ありがとうございました。それに...........随分、気を使って貰っちゃって...ご迷惑おかけました。」


「今、お茶入れるから待ってて。」


「そんな...そこまでして貰う訳には…。」


「お店のお客さんにも出てるし、そんなに遠慮しなくてもいいから。それに、私も休憩だから飲みたいしね。」


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