A・O・I
「えっ?!!だって、会社の受付の娘と仲良くしてたじゃない........それに、ずっと帰って来なくて...その娘の所に泊まってたんじゃないの?!」
「どうしてそんな事になるの?想像力凄すぎ。」
「だって...........だってっ!!急に帰って来なくなったし、彼女に毎日会ってるって言ったじゃないっ!!私の連絡には素っ気なくて...........。」
「毎日会ってる俺の好きな人...........本当に分からないの?」
肩に回された腕に力が込められる。
ドクンッと心臓が大きく胸を打った。
「...........硝子さんに、謝らなくちゃいけない事があるんだ。俺、...........硝子さんの実家に行った。勝手に行った事は謝ります。..........でも、このまま最後まで話を聞いて欲しい。」
さっきまで浮ついていた自分に、一気に罪悪感が襲って来る。
いつだって忘れてはいけない事なのに。
少し間があって、蒼が一つ大きく息を吐いた。
「俺にはね、長年の疑問があったんだ。硝子さんが何故、赤の他人の俺を引き取ったのか。子供心にもずっと不思議だった。でも、その理由を聞いてしまったら今ある全てが壊れてしまいそうで聞けなかった。あなたを想う心がどんどん大きくなるに連れて、不安も同じくらい膨らんだ。でも、もう悩むのは止める。例え身代わりだったとしても、あの時の俺は、確かにあなたに救われたんだ。俺に失くならない帰る場所を作ってくれた。他人を信じる事が出来る様になったのも、硝子さんのお蔭だよ。だから...........だからね、俺達はあの時、お互い必要としていた部分を、ただ補い合っただけ。悪い事は何も無いんだ。」