A・O・I
「本当...........私ってダメだな...........蒼がずっと傍に居てくれないと。」
「缶切りくらいで大袈裟だよ....フフッ。」
手際よく缶詰を開けている蒼の背中を眺めていると、懐しく、愛しい気持ちが身体中に、滲む様にゆっくり広がっていく。
「ねぇ......。」
「何~?」
「ねぇってば...........。」
「待って、今持って行くから。」
「...........ずっと...........傍に居て...........居なくならないで...........離れないで...................。」
何も応えず、蒼は黙ったまま背中を向けて、ソファーのサイドテーブルに桃を運んで置いた。
蒼が私の方へ向かって歩いて来る。
「ごっこめんっ!!今の無しっ!!...........わっ?!!」
座っている私を軽々と抱き上げると、蒼は私の腕を自分の肩に回した。
「少し痩せたね...........しっかり掴まってて。」
心臓が飛び出しそうなくらい高鳴っている。
リビングのソファーまで来ると、そのまま私を膝に乗せて座った。
「あっあの...........蒼?」
「いいから、早く桃食べて。」
「えっ?!...........う、うん。...........でもっー」
「早く。」
緊張で震える指で器を取り、桃を一口、口に運んだ。
甘い桃は、具合悪さを少しづつ和らげていく。