A・O・I

お店が開店する時間から回り始めて、寝具、家具、食器類など、ありとあらゆる生活必需品を揃えて行った。

夕方になる頃には、二人共ヘトヘトでアーケードを歩いていた。


「大体の物は買ったし、後忘れ物ないよね?」


いつもなら直ぐ頷く所で、何故か蒼は戸惑った様に私の目を見て俯いた。


「何かまだ必要な物あった?」


「……………。」


「どうしたの?慣れない街で疲れた?」


蒼は慌てて左右に顔を振った。


「私の仕事営業職だから、帰りも遅いし、休みも接待とか急に入るから今日一日に大部詰め込んじゃった!ごめんね?大変だったよね?…………帰ろっか?」


頷く蒼の腕を引いて、夕焼けに映し出された影を追う。


「今日は、私がご飯作るからね?」


蒼は私の声にパッと反応する。


「……うどん美味しかった……ご馳走様でした。」


蒼は透き通る程の青い目で、私を見つめると小さく頷く。

今日は目を合わせてくれただけで充分だと、蒼の腕から伝わる体温を感じていた。





「お風呂沸かすから先に入ってて、その間にご飯作るから。」


「……はい。」


「えっ?」


不意の返事に振り返ると、蒼は背を向けて部屋に戻って行った後だった。


「少し距離が近づいたかも……フフッ!」


デパ地下で買ってきた惣菜を取り出し、皿に盛っていく。

今日は流石に疲れたから手抜きご飯だ。

後は温めるだけの状態で蒼が上がってくるまで時間が余った。


「そ~だ!新しいキャンドル買ってきたし、一緒にお風呂入っちゃおうかな?……う~ん、まずいかな?……いや、大丈夫でしょ?女同士だし!!」


< 12 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop