A・O・I
濡れた体を適当に拭いて着替えると、そのままソファーに座り込んだ。
ぐるぐると頭の中は混乱し、事実を受け入れる事が出来ない。
「……ちょっと待って、私は男の子を引き取って来たって事で……それで知らずに風呂に一緒に入ってしまった……………………」
たった今やらかした現状に羞恥心が込み上げてくる。
「あ~もぅ……何やってんのもぅ……ずっと女の子だと思って馴れ馴れしくし過ぎちゃったかも……うぁ~……!!絶対傷付けたよね…………あぁ~…………。」
頭を抱えて俯く。
いくら考えても結論も出ないまま、時間は待ってはくれず、バスルームから蒼が出て来た。
さっき着ていた服を着ている。
こうして見ると、男の子に見えなくもない。
「……あの、……なんかすいません……。」
「いや、ごめん!私が勝手に勘違いしてただけで、気を悪くしたよね?本当にごめんなさい!!」
「…………いえ、昔からよく間違われるし……平気です。」
「……それで、これからの事だけど……」
「施設に行きます。」
「え?」
「最初からそのつもりだったし、気に病んだりしないで下さい。元々何の関係も無い他人ですから……。今日買った物はまだ開けてないので返品してください。……少し疲れたので、先に休みます。」
「ちょっと待ってっ!!」
きっと何度も同じ目に遭って来たのだろう。
今迄殆ど自分から喋らなかった癖に、こんな時だけ流暢に喋って、おまけに作り笑顔をする蒼に、私の胸は締め付けられた。
「誰が施設に預けるって言った?勝手に決めないでよ!私はあなたの保護者になるって決めたの!!嫌だって言っても絶対手放したりしないんだから覚悟しなさい!!」
突然の私の剣幕に、蒼は目を真ん丸く開いて固まっている。
「買った物も返品しない!分かった?分かったなら返事をする!!そんでその服は洗濯機に入れて、今日買った部屋着に着替えて来なさい!!」
「はっはい!」
「宜しい!!」
私の命令口調に、俯いた蒼の口元の綻びを見つけて、私は何だかとても嬉しかった。