A・O・I
「おはよう!」
「おっ!おはよう!朝から気合入ってるな?本命の商談あったっけか?」
「ふふっ!違う、今日は、預かってる子の三者面談なんで 。」
「あ~前に話していた、お葬式の時に引き取った子か?」
「うん。」
会社の近しい人には蒼の事は話していた。
どうせ会社には直ぐバレるし、隠していては、いざと言う時身動き取れなくなりそうで全て先手を打っていた。
周りは独身の私がそんな事をするなんてって、驚いていたみたいだけど、さして深くは聞いてこなかった。
本当は突っ込んで聞きたいのだろうけど、そこまでしてくる下世話な勇者は今の所皆無。
「お前も変わり者だよな~……結婚はもう諦めたわけ?」
いや、ここに一名発見。
「さぁね?結婚にあんまり執着してないのは事実ね。最近は離婚率も高いし、お金掛けて結婚式してすぐ離婚するなんて、非効率で非生産的じゃない?」
「うわ~夢ねぇ~……。」
「夢はとっくに捨ててる………大分前からね。」
「え?早っ!そんな若い時から冷めてたのかよ。」
「まーね。」
今までこんな話題は避けてきた筈なのに、最近の私は少し変わって来ていた。
蒼と生活する事で、もう一度あの時をやり直している気になっているのだろうか。
蒼からしたら傍迷惑な話だ。
「今日は午後休貰ってるから、私に仕事頼もうとか考えないでよ!!絶対残らないんだから!!」
「はいはい分かりましたよ……でも、この前の貸しの件ちゃんと奢れよ?忘れんなよ!」
「分かってる!好きな所、予約してくれていいから。」
「うぇ~い!!絶対だぞ!」
子供みたいにはしゃぐ山口君に、ついついほだされる。
いつも元気で明るくて、真っ直ぐ育ったなぁ~と勝手に親目線の気持ちで見ていた。
「蒼も少しでいいから、こんな顔見せてくれたらいいのに……。」
「え?なんか言った?」
「ううん……何でもない!」
同い歳の成人男性に向かって、全くもって失礼な話だけれど……。