A・O・I
30分遅刻だ!
ヤバイ!!
全力疾走も、そろそろ限界に来てる。
息が苦しいし、足がもつれる。
廊下走るの禁止の文字を尻目に全力疾走。
漸く遠くの方に教師らしき人の人影を見つけた。
「橘君?保護者の方は、まだいらしてないの?」
「……はい。仕事が忙しい人なんで、きっと急用が出来たのかも知れません。先生、すいませんが三者面談はー」
「先生!!すいません!!遅くなりました!!」
「あら、来たじゃない?よかったわね?…………そんなに急がなくても大丈夫ですよ~。」
「いえ……はぁはぁ、本当に遅れてしまって……はぁはぁ……すいません!!」
「それでは、こちらへどうぞ。」
先生が先に教室に入ったのを確認して、蒼に振り返る。
「遅くなってごめんね~!最後の最後でトラブっちゃって……」
言い訳の途中で言葉を失った。
何とも言えない切なそうに潤んだ瞳。
人一倍繊細なこの子を思えば、一秒たりとも遅れてはいけなかった。
きっと私を待っている間、考えなくてもいい事まで考えを巡らせていたのだろう。
しくじった………この瞬間私はそう思った。
「仕事なら仕方ないです……無理して来なくても大丈夫ですから……。」
弁解をする前に、蒼は教室に入って行ってしまった。
「はぁ~……何やってんだ…私は……。」
軽く前髪を整えて、蒼の背中を追って教室に入った。