A・O・I
「それでは面談を始めましょう。」
「はい。」
蒼の担任は50代くらいの女性だろうか、にっこり笑う目尻の笑いじわが印象的だ。
落ち着いていて、人当たりはいい。
「橘君は大人しい性格ですが、クラスにも慣れてきて、問題なく過ごせていますよ。特に女子生徒にはとても人気です。」
「そうですか!それなら安心しました!」
「成績もとてもいいです!編入テストも好成績でしたし、これからが楽しみです!」
「え!そうなんですか?!凄いじゃない?!」
ノリで隣の蒼を肘で小突くけれど、俯き加減の蒼は反応が無かった。
「あの……一つだけ…いいですか?」
「何でしょうか先生?」
「お二人のご関係は、どういったものなのでしょうか?」
「あぁ~……えっとですね。血の繋がりも、義理の親戚関係でも無いんですが、私の父の恩師の息子だったんです。その方も亡くなってしまって、それで私が名乗り出た次第で……」
「あぁ……そうでしたか。」
「母親代わりなんてなれないと思いますけど……はははっ……え~と……何が問題ありますか?」
「いえ、確認の為ですのでお気になさらないでください。」
「はい。」
ものの15分で面談は終わった。
無口なこの子が、学校生活を楽しんでいるかは置いといて、それなりに上手くやっているだけで少しは安心出来た。
「じゃ……帰ろっか?」
「…………はい。」
いつもより返事の声が暗い。
やはりまだ怒っているのか。
様子を伺っていると、握ったままの紙袋に気がついた。
「あ!やだ!先生方にお土産持って来たのに渡すの忘れてた!ちょっと行って来るから待ってて!!」