A・O・I
すぐ目の前の廊下を曲って行く先生の後を追って行く。
直ぐ追いつけると思った先生は角を曲がると結構先に進んでいた。
大声を出す訳にも行かず、小走りに追い掛ける。
「先生!!先生!!あの、さっき渡し忘れたのですが、これ皆さんで召し上がってください。」
「まぁ、いいんですか?すいません。」
「お近づきの印に……」
つい営業トークみたいな口調になってしまう。
「え?」
「いえいえ……あの蒼の事、宜しくお願いします。」
「はい!こちらこそよろしくお願いします!!橘君は心配いりませんよ!大丈夫です!」
「はい!……それでは失礼します!」
深々と頭を下げてから踵を返した。
“あの子を待たせてる”
来た道をまた小走りで戻って、さっきの角を曲がろうとした瞬間だった。
曲がり角の先の廊下で、大きな声が響いた。
「お前さ~……なんなわけ?何人デスカ~?本当マジムカつくわ~!!」
「…………。」
「今日、朝、百瀬と話してたな?転校して来たばかりの癖に、調子乗ってんじゃねーよ!!」
「…………。」
二人の男の子に囲まれて、蒼は立っていた。
明らかに逆恨みだろうが、相手は相当頭にきているのか、どんどん声を荒らげていく。
“止めなきゃ…私が守らなきゃ………!!”
心ではそう思っているのに、体が言う事を聞かない。
怒鳴り声に足が震える。
「何だよその目は!あぁ?!シカトしてんじゃねーよ!お前なんかなぁ~……ただ物珍しいだけの存在なんだよ!!目障りなんだよ!!消えろよ!!」
一人が拳を振り上げる。
その瞬間、私は無意識に飛び出していた。
蒼とその二人の間に滑り込むと、同時に強い衝撃で壁に吹き飛ばされた。
ダンッ!……ドサッ……
目の前がキラキラと光って見える。
後から強烈な痛みが、肩から背にかけてジワッと広がって行く。
「痛たた……つぅ……」
「なっ!なんだよお前!!女?……急に入ってくる方が悪いんだからな!!」