A・O・I
「まだ帰ってないか……。」
自分の家が前より広く感じるのは、あの子が居ない所為だと思い知る。
「はぁ~……急に息子だなんて言って、図々しいにも程があるよね……また失敗しちゃったかな……。」
ソファーに膝を抱えて座り直して足元を見ると、この間の靴擦れの跡が、薄らとピンク色になって残っていた。
「今度こそ出て行っちゃった……かな…………?」
あの子の顔を思い出す。
どのくらいそうしていただろう。
玄関の方でドアを開ける音で我に返った。
足音はそのまま廊下を走って、勢いよくリビングのドアを開けた。
「どうして一人で帰るんですかっ!!」
「え……?!」
「答えてください!!」
髪の毛を汗で濡らして息も荒い、きっとずっと走って来たんだ。
「えっ……だって……怒って帰ったのかと思って……」
「保健室に行ってたんです!!湿布貰って戻って来てみれば何処にも居ないし………校内中探し回りました!!僕がどれだけ!!」
「ごめん.....。」
「はぁ~………。取り敢えず、殴られた所見せてください。」
「えっ!えっ!……ちょっと!!大丈夫だから…本当にっ!!」
半ば強引に肩を露わにされる。
「痛っ……!!」
「全然大丈夫じゃないし……少し大人しくしててください。」