A・O・I
蒼も仕事に就いて、立派に自立したのに、いつまでも自分と生活してていいのか?
私もそろそろ子離れしないといけない。
「ねぇ?蒼。」
「何?」
「あのさ……前もチラッと言ったと思うけど、いつまでも私と一緒に暮らさなくてもいいんだよ?蒼も一人前になったんだから、一人暮らしでもして、彼女とか……さ?」
自分で言っておいて、何故かツキツキと胸が痛む。
「硝子さん……何心配してんの?ククッ……変なの。先の事はちゃんと考えてるから心配しないで。」
「そ、そう?本当に私に気兼ねしないでいいからね?」
私は今どんな顔をしているのだろう?
上手く笑顔を作れているだろうか?
無意識に蒼を見ていたのか、彼は眉を少し寄せて私の頬に手を当てた。
「そんな顔しないでよ……そんな顔されると……僕は…………」
「ごっごめんっ!!子離れ出来てないのは私か!!アハハハッ!!あ!私、そろそろ行かなくちゃ!!」
椅子に置いてあるバックを掴むと玄関まで小走りに向かった。
「行ってきま~す!!」
ドアノブに手を掛けた瞬間、腕を後ろに引かれた。
「わっ!!」
「ほら、忘れ物……外は寒いから……。」
マフラーを首にゆっくり掛けて前で結ぶ。
「出来た。」
「あ……ありがと……じゃ、行ってきます!!」
「行ってらっしゃい。」
優しい笑顔で私を見送る姿が横目にチラッと見えた。
バタンとドアが閉まって、ドアの前に立ち尽くす。
「今年で何歳になった?蒼が25で、私は38…………しっかりしなくちゃ……はぁ~。」
私は大きく両頬を叩くと、足早に会社へと向かった。