A・O・I
今日は一日、外での打ち合わせが立て込んで、社内に戻ったのは、午後の3時を過ぎた頃だった。
ずっと見れてなかった社内メールをチェックしていると、部長からも一通、メールが来ていた。
「要件があるから、部長室へ来い?…………なんだろ?珍しい………。用事がある時は直接来るくせに……。」
訝しげに思いながら、部長室のドアをノックすると中から声がした。
「入れ!」
「失礼します。」
「おお!荒川君、戻ったか!」
「はい。あの、メール拝見しました。要件はどういった内容ですか?」
「それなんだが、荒川君……君、お見合いしないか?」
「えっ!お見合いですか?!」
「そうだ!!君もいい歳だろ?!そこで、取引先のいい青年がいるんだよ!!先方も相手を探しててな?仕事一筋で恋人も居ないそうだ。そこでぜひ君を紹介してくれないかと先方の上司に相談されてな?ご指名だぞ!!」
部長が自慢げに、私に目線を送る。
「いや……私もう歳がアレですから…………結婚はもう……。」
「何?!諦めるのは時期尚早だぞ!!相手も恋人を探しているんじゃない。結婚相手を探してるんだ!チラッと見たけど、男前だぞ?」
「……はぁ……そうですか。」
部長の男前は当てにならない。
きっと昔の映画スターみたいな、古いタイプの男前だろう。
「とにかく会うだけ会ってくれ、接待の延長だと思ってさ。丁度新しく契約も取れたばかりで、関係を悪くしたくない。仕事だと思って...なっ?」
「……はぁ。……仕事...ですか?」
「そう、仕事上の付き合いだ!!」
「分かりました。ちゃんと断ってくださいよ?」
「そう言うなよ?もしかしたら一目惚れするかも知れないじゃないか?」
「有り得ません。」
「ハハッ!!相変わらず頑固だな?簡単なプロフィール送られて来たけど見ておくか?」