A・O・I
「いえ、結構です。それじゃ日取り決まり次第、連絡ください。」
「あぁ、分かった。」
部長室を出ると、丁度山口君と鉢合わせた。
「おっと!どうした?部長室から出てくるなんて?」
「……うん。ま~ね……めっちゃ面倒臭い接待頼まれただけ。」
「そんな大変なのか?俺、変わろうか?」
お見合いのド定番の、振袖姿の山口君が脳裏に浮かんだ。
「え?…………プッ!!アハハハハッ!!」
「ん?何だよ?!」
「いや、ごめんっ!!気持ちだけ貰っとく!大丈夫だから!!」
「うわ!!何か腹立つ!!教えろよ~!!何処と接待だよ?!おいっ?!」
落ちていた気分が少し浮上する。
「ククッ!!気にしないでいいから!」
「う~わ!!最悪~!!」
「それよりも、今から少し休憩しない?」
「お?おぉ……いいけど……。」
「よ~し!じゃあ、さっさと行こ!」
「ああ~はぐらかされた~気になる~!!」
この歳でお見合いの話なんて、バレたら社内の笑い者だ。
山口君には悪いけど絶対秘密。
「なぁ?何飲む?」
「今日は疲れたから、甘~いカフェオレ。」
「OK……カフェオレ……と。」
「アレ?奢ってくれるの?」
「奢って、さっきの話吐かせようと……。」
「フフッ……絶対秘密!」
「あぁ~無駄に奢っちまった~!!」
大袈裟に頭を抱える姿を尻目に、温かいカフェオレを一口啜った。
「あ~温まる~。」
「俺も飲もー。」
山口君が自分の分を買って隣に座った。
「ふぅ~……美味い。…………そういやさ、蒼君……」
「えっ……?」
不意に蒼の名前を呼ばれて、ドキッとする。
「蒼君もう、就職したんだろ?いつまで一緒に暮らすつもりなんだ?」