A・O・I

「いえ、結構です。それじゃ日取り決まり次第、連絡ください。」


「あぁ、分かった。」


部長室を出ると、丁度山口君と鉢合わせた。


「おっと!どうした?部長室から出てくるなんて?」


「……うん。ま~ね……めっちゃ面倒臭い接待頼まれただけ。」


「そんな大変なのか?俺、変わろうか?」


お見合いのド定番の、振袖姿の山口君が脳裏に浮かんだ。


「え?…………プッ!!アハハハハッ!!」


「ん?何だよ?!」


「いや、ごめんっ!!気持ちだけ貰っとく!大丈夫だから!!」


「うわ!!何か腹立つ!!教えろよ~!!何処と接待だよ?!おいっ?!」


落ちていた気分が少し浮上する。


「ククッ!!気にしないでいいから!」


「う~わ!!最悪~!!」


「それよりも、今から少し休憩しない?」


「お?おぉ……いいけど……。」


「よ~し!じゃあ、さっさと行こ!」


「ああ~はぐらかされた~気になる~!!」


この歳でお見合いの話なんて、バレたら社内の笑い者だ。

山口君には悪いけど絶対秘密。


「なぁ?何飲む?」


「今日は疲れたから、甘~いカフェオレ。」


「OK……カフェオレ……と。」


「アレ?奢ってくれるの?」


「奢って、さっきの話吐かせようと……。」


「フフッ……絶対秘密!」


「あぁ~無駄に奢っちまった~!!」


大袈裟に頭を抱える姿を尻目に、温かいカフェオレを一口啜った。


「あ~温まる~。」


「俺も飲もー。」


山口君が自分の分を買って隣に座った。


「ふぅ~……美味い。…………そういやさ、蒼君……」


「えっ……?」


不意に蒼の名前を呼ばれて、ドキッとする。


「蒼君もう、就職したんだろ?いつまで一緒に暮らすつもりなんだ?」


< 28 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop