A・O・I
完全アウェーで居場所が無い私は、広い庭に逃げる事にした。
外にも家に入り切らない弔問客が屯していたので、さして浮く事は無く散策出来る。
外から見ると本当に古い家だった。
築30年は経っていそうな外観に、整えられた沢山の植木。
「植木に掛けるくらいなら、家直せばいいのに……。」
そんな事を思いながら池の鯉を見ている時だった。
「あら?もしかして硝子ちゃん?」
突然の問い掛けに振り向くと、親戚の叔母さんが立っていた。
「景子(けいこ)叔母さん……どうして?」
「私も橘先生には物凄くお世話になったのよ~!硝子ちゃんはお母さんの代わりに来たの?」
「はい……腰を痛めてちょっと遠出出来ないので。」
「あら~そ~ぉ。歳はとりたくないわね~う~ん……そ~ぉ。」
実家に居た時は、よく盆暮れ正月に顔を合わせていたけれど、一人暮らしする様になってからは一度も会って居なかった。
お父さんに少し顔が似ているけれど、性格は全然違くて、噂好きのスピーカー。
出来るだけ込み入った話はしない様に、当たり障りの無い会話を誘導する。
「硝子ちゃん聞いたわよ~?また昇進したんだって?羨ましいわ~!!家の一番下の子まだ内定貰えてないのよ~困ったわ~……硝子ちゃんの所で採用してくれないかしら?」
「私は営業なので、すいませんが人事は……」
「え~昇進したんでしょ?上司に頼めば何とかならないの~?」
「……すいません。」
猫なで声のゴマすりが通用しないと分かると、途端に声のトーンが変わった。
「そう……それじゃ仕方ないわね……。」
「本当にお役に立てなくて……ごめんなさい。」