A・O・I
「確かにそうだけど……一応取引先だし、断れないから……。」
「………………。」
「蒼?」
「何日?」
「え?」
「お見合い何日なの?」
「えっとまだ日にちは決まってないけど、近い内だと思う。」
「…………そう。」
その後の蒼はずっと黙ったままで、折角の鍋なのに居心地の悪い夕食となった。
テレビの音だけがやけに賑やかに響いて、それが余計に蒼の無言を引き立たせる。
「じゃ、先寝るから……おやすみ。」
「おやすみ~!!」
蒼の気配にテレビを見た振りをして集中していると、暫くして背後でドアを閉める音が聞こえた。
「はぁ~…………こんな気まずい雰囲気、久し振り……はぁ~……どうしよ……。」
生い立ちを考えれば当然だけど、蒼はとても人間関係に繊細だ。
すぐ私の顔色を読んで、周りに気を配る。
きっとまた私の結婚について、先々の所まで心配したのだろう。
そう考えると、私の頼りっぱなしな生活態度を改めなければならないと心底痛感した。
「モラトリアムは今度こそ終わりか………。」