A・O・I
「……もう一度っ……!」
「え?」
「……もう一度、やり直したい……あの時から。」
「はぁ???何言ってんの?!!」
「償いたいんだ。硝子と…………葵に……。」
「どうしてっ?!!名前…………知って………」
「あぁ……。親の目があって会えなかったけど、何とか調べたんだ。それで知った……名前と……そして、亡くなってしまった事。」
まるでソーダ水の泡の様に、次々と昔の記憶が浮かび上がっては、弾け飛ぶ。
瞳からは私の意思と反して、ぼたぼたと涙が零れ落ちた。
「今更っ!!今更何を言うの?!!守ってくれなかったじゃないっ!!私とあの子を見捨てたじゃないっ!!!今更やり直すなんて、もう……もう守るべきモノは何も無いわっ!!」
「……硝子。」
「あなたを愛してた…だから全てを捨てて、あの子を産んだの。あの子を産んで、あなたが居なくなって……私はあの子だけが支えだったの……それなのに……それなのに……死なせてしまった……。」
思い知れとばかりに、蓋をしていた感情を彼にぶつける。
「…………本当にすまなかった。……でも、離れてたけどずっと君を思ってた……本当に君だけを。大手に入社して、やっとここまで来たんだ。もう、誰にも何も言わせない!!今の君を支えたい……信じてくれ。」
「.....遅いよ.....私はもう支えなんて要らない。この先も一人で生きていけるし、そもそも幸せになる資格なんて無いの……。」
拒絶されて、啓介は辛そうな顔をしながらも内ポケットから取り出したハンカチで、私のぐしゃぐしゃになった顔を拭っていく。
その優しさが、余計に私の涙を助長させた。
「硝子……ごめん……ごめん。一緒に居てやれなくて本当にごめん……。でも、愛してるんだ……君をずっと。」