A・O・I

この上無い甘い言葉。

嫁に行き遅れた私には、勿体無い言葉なのかも知れない。

たまに、とてつもなく何かに寄り掛かりたくなる時がある。

全てを投げ出して楽になりたい様な……そんな気持ち。

でも私の記憶がそれを許してはくれない。

周りは、皆慰めてくれる。

優しい言葉で包んでくれる。

頭では理解している筈なのに、私の心の真ん中はそれを受け付けなかった。

いや、受け入れられない。

受け入れてはいけない。

私の贖罪なのだから……。

私一人で一生背負っていく。

そう決めたのだから。


「……ごめん。泣いたりして、少し大袈裟だった。もう大丈夫だから離しー」


啓介から離れようとした瞬間、横から腕が伸びて来て、その腕に私の身体は引き寄せられた。


「硝子さんに何してるんですか?」


「君は……?」


「あなたこそ誰ですか?何故、硝子さんが泣いてるんですか?場合に寄っては許さない!」


「蒼?!どうして……ここに?」


敵意を剥き出しにして啓介を睨んでいる、こんな蒼を見るのは初めてだ。

身体中がドクドクと脈打って、私をざわめかせる。


「あおい……?」


「メール来た後、帰ってくるの遅いから迎えに来たんだ。ここはよく来る店だし、もしかしたらって思って。」


「そう……。この人は違うの、私が具合悪くした所を介抱してくれてただけで……。調子良くなって来たし、帰えれるから。すいません、ありがとうございました。」


「失礼をしました。……硝子さんがお世話になりました。」



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