A・O・I
想像するだけで分かる。
蒼は高校生の頃から女の子に囲まれていた。
ハーフで顔はいいし、身長も高い。
勉強もスポーツも出来たから、当たり前だ。
本人も田舎に居た頃との周りの反応の違いに、最初は戸惑って居たようだけれど、高校二年生になる頃には、女子の扱いも上手くなっていた。
それは、家にまで押し掛けてくる女の子を、何度も宥めて帰らせる姿を見て来ていたからだ。
蒼と話をした娘達は、皆一様に熱に浮かされた様な瞳で蒼を見つめては、頬をピンク色に染めていた。
(そんなの絶対ダメだ……。)
蒼には内緒で社員旅行を決行させないと!
私は心の中で固く決心した。
それからの私は、旅行迄の数日間、蒼に気取られない様にこっそり準備を始めた。
まるで何も無いかの様に、ごく自然な態度で接し、旅行当日も私は実家に一泊する体で、マンションを出る事に成功した。
「ふぅ~……何とかバレずに済んだ。……えっ?!やばっ!!遅刻するっ!!」
社員旅行とは名ばかりの今回の旅行は、私にとっては迷惑極まりない話で、どうせ取引先のお偉いさんにお酌をし、大量のお酒を飲まなくてはならなくなる。
リラックスや楽しむなんて二の次だ。
「あっ!!玄関にウコン忘れて来た!!……はぁ~……もうっ!!」
ギリギリの時間でも、ウコンだけは買わないといけない。
近くのコンビニに駆け込んで、いつものドリンクを調達した。
憂鬱な原因は、実はもう一つある。
取引先の啓介の参加。
あの人を目の前にしたら、私はどんな態度を取ったらいいのだろうか?
答えが出ないまま、私はウコン片手に会社へと急いだ。