A・O・I
15歳で初めて、同級生の彼氏が出来た。
私の世界は彼だけになり、体の関係にも自然になった。
当然の如く、子供だった私達は避妊に失敗し妊娠。
彼とは別れる事になったけれど、周りの反対を押し切って私は出産した。
学校も中退し、友達も失った。
その頃の私は彼への愛を貫く事だけが重要だったのだ。
それが全てだと、正しいのだと盲目的に思っていた。
浅はかだった……
一時の幸せは、我が子の乳幼児突然死症候群(SIDS)によって、泡の如く消えてなくなった。
暫くは何も手につかなくて、食べる事も出来ず、自暴自棄になっていた。
何度も死のうとした事もあった。
両親の支えがあって、何とか今の自分がある。
それでもあの子の、葵(あおい)の事を思い出すと深い悲しみと、罪悪感に襲われた。
あの喪失感は未だ薄れる事無く、私の心の奥に重く沈んでいる。
「式……行かなくちゃ……」
動揺した心を隠しながら、グッと脚に力を入れ立ち上がる。
父には申し訳無かったけれど、式の間中、私は心ここに在らずだった。
ただ一つ記憶に残ったのは、“橘先生”と呼ばれていた父の恩師は、とても優しそうな笑顔で遺影の中に佇んでいた事くらいだった。
景子叔母さんとはもう顔を合わせたく無かった私は、お葬式が一頻り終わると、頃合いを見計らって席を立った。
挨拶だけはして帰ろうと、母屋の茶の間へ向かうと、田舎特有の長く暗い廊下に、誰かが立っているのが見えた。
更に近づくと、それは綺麗な女の子だった。
中学生くらいで、良く見ると何処かの血が混じってる様に顔立ちがハッキリしている。
俯いて壁に凭れるその子に軽く声を掛けてみたけれど、反応は無かった。