A・O・I

「だから私はねっ?ちゃんと提案したんですよっ?!!それなのにあの若造と言ったら……全く!!」


大宴会場の広い部屋で、懐石料理を囲んで団欒している家族を尻目に、私達営業は取引先の接待に励んでいた。

特にこの山本課長は、酔うと厄介なのだ。

出来る同僚の愚痴を、自分の事を棚に上げて長々とリピートする。

いつもなら、時間が決まっている場所での接待なので、先が見えているが、泊まりとなるといつまでこれが続くのか、考えただけでゾッとする。

おまけに慣れない日本酒にも付き合わされて、目の前がフワフワし出した。

これは粗相をする前に、早くお開きにしないと。


「山本課長!ご最もです!!」


「山本課長?大丈夫ですか?そろそろお部屋でお休みになられては?一旦休憩して、また飲み直すのはどうでしょう?」


大体飲み直しとなると、ここまで泥酔して部屋に戻れば、そのまま朝まで寝る筈だ。

山口君の機転に、アイコンタクトを取りながら様子を伺ってみる。


「部屋で休憩?何だよ!折角泊まりなんだから、もっと飲みましょうよ!!ねっ!私はまだまだ行けますよ?!!若いんだから君達も付き合ってよ!!」


「ほら!荒川君、もっと飲んで飲んで!!」


並々と注がれた日本酒のコップを口元に当てられる。

これを飲んだらヤバイ……分かっていても営業の性か、どうしても断れない。


「頂きます!!」


一気に飲み干すと、喉と胃に熱いものが広がった。


「おおー!!いい飲みっぷりだ!やはり営業は違うな!!アハハハッ!!」


もう、笑い事じゃ無いよ…。

これはガチでキツい……。

フワフワくらくらがさっきからどんどん強くなって行ってる。

このままじゃ……

このままじゃ……


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