A・O・I
「山本課長……。」
背中の方から、誰かの声が聞こえる。
この声は……啓...介...??
くらくら目の前が揺らぐ中に、啓介が不機嫌そうな顔で登場した。
「ごっ後藤?!!」
「何してるんですか全く……。飲み過ぎですし、飲ませ過ぎです!!見てくださいこの空の瓶を、分かりますよね?折角、旅行にまで招待してくださった皆さんに、これ以上迷惑かけないでください!!」
「どうしてお前っ!!!仕事で参加出来ない筈じゃなかったのか?!!」
「速攻で片付けて、こっちに来ました。来てよかったですよ……。さぁ、部屋で戻りましょう。」
山本課長が一瞬、言い返そうと啓介に向き直ったけれど、無言の圧力で意気消沈した様だった。
山本課長を黙らせると、啓介は申し訳なさそうにこちらに向き直って、深々と頭を下げた。
「本当にすいませんでした。」
「いえいえ!!とんでもないです!!楽しんで貰う為にご招待させていただいたので!!」
「ご苦労掛けました。…………課長、部屋に戻りましょう。何階の部屋ですか?」
「後藤さん!山本さんは隣の部屋の私が送りますので任せてください!!今来たばかりですし、後藤さんはこのまま少しお食事なされては如何ですか?」
「え?……あぁ……すいません。それではお言葉に甘えても宜しいでしょうか?昼から何も食べて無いもので……。」
啓介が私の方をチラッと見たけれど、私はボーッとそれを眺めていた。
「おい!荒川!!俺が山本課長送るから後藤さんに料理頼んでくれ!任せたぞ。」
「え?……あ、はい!!こちらへどうぞ。」
「飲み物は取り合えぢゅ、ビールで宜しいれふか?」
「えっ?……硝子?!」
酔いでお酌をする手が定まらない。
「大丈夫か?」