A・O・I
ここ最近、硝子さんの様子がおかしい。
そわそわ、こそこそしてるかと思えば、聞いてもいないのに結構先の自分のスケジュールを説明しだしたり、絶対何かを隠している。
仕事も上の空、今日もまた、ほら……書類入の封筒を玄関先に忘れて行った。
「全く……またお見合いなんて話に、なってんじゃないだろうな。」
書類を片手に家を出ると、急いでタクシーに乗り込んだ。
朝一で使う資料だったらまずいし、取り敢えず届ける為に向かう。
「携帯は繋がらないか…。」
硝子さんに会えなくても、硝子さんの会社には何人か顔見知りもいるので預ければいい。
「すいません。営業課の荒川 硝子を呼んで欲しいんですが。」
「え?あっ!はい!!あ、あの……お名前は?」
「蒼です。そう言って貰えば分かりますから。」
「蒼って…下のお名前ですか?」
「え?」
「あ~!!蒼君!!ごめんね~この子、新人さんなの。硝子さんね?今、確認するね。ほら、佐藤さん!何真っ赤になってんの?フフッ……この子、蒼君見て照れちゃってるみたい。」
「先輩!そんなんじゃないです~!!」
「本当かしら??蒼君、気にしないでね!」
「いえ、大丈夫です。フフッ。」
若くて、くるくる表情が変わる様は、まるで小動物の様で可愛らしく見えた。
目が合うと、すぐ真っ赤に顔の色が変わるので、待つ間、面白くてわざと彼女を見てみた。
「なっなんですかっ!!恥ずかしいので見ないで下さい!!」
「フフッ……ごめんなさい。」